おなかの赤ちゃんの異常を調べる

出生前診断は、赤ちゃんの異常を判定するものです。

高齢出産に起こりやすいトラブル対策として、検査を勧める病院が少なくありません。
検査対象は35歳以上の妊婦さんのほか、以前に染色体異常児を出産した人や遺伝性の病気の保因者などです。
検査には、スクリーニング検査と確定診断検査とがあります。
前者は特定の疾病を有する可能性を予測するもので後者は、ある程度正確な診断が可能な検査です。
また、体外受精の場合で重い遺伝病や習慣性流産が疑われる時のみ、子宮内に挿入する前に受精卵を調べることができます。
この検査は、いくつかの大学病院などで行われています。

スクリーニング検査 【超音波検査】
★検査の方法
超音波検査は広い意味での出生前診断検査といえます。定期健診時に胎児の形態や骨格、臓器などの成長具合をチェックすることで奇形や異常などを確認できる場合があります。最近は、首の後ろのむくみと染色体異常との関連が注目され妊娠12週位に、むくみの有無を調べること(NT測定)があります。
★結果の受け止め方
NT測定は、染色体異常の疑いを示すだけです。血清マーカー検査や羊水検査を受けるかどうかの判断材料の一つと考えればよいでしょう。
★注意点
超音波検査そのものは広く普及していますが、NT測定は新しい検査のため病院によって対応は様々です。
★メリット
・妊娠12週という早期に染色体異常を疑える
・痛みもなく安全で手軽に、しかも反復して受けられる
・ほかの検査を受けるかどうかの参考になる
★デメリット
・むくみが見られても一時的な場合があるので必ずしも染色体異常とは限らない
スクリーニング検査 【血清マーカー検査】
★検査の方法
血液を採取して調べます。トリプルマーカーテストとクアトロテストの2種類があります。前者は血液中の3種類の成分を、後者は4種類の成分を測定して確率値を出します。検出率はクアトロテストの方がやや勝っています。
★結果の受け止め方
検査結果は1/500というような確率で示されます。ダウン症候群に関しては35歳の妊婦さんから生まれる確率の「1/295」を基準値にして検査数値が1/295以上の場合は陽性、1/295未満の場合は陰性とされます。ここで留意するのは、陽性という結果が出ても基準値よりダウン症候群の赤ちゃんが生まれる確率が高いというだけで100%確定ではないということです。逆に陰性は確率が低いだけで断定はできません。検査によって示された数値のもつ意味や限界を理解しておきましょう。
★注意点
より正確に診断するためには羊水検査を受ける必要があります。どちらも結果が出るまでに時間がかかるため、羊水検査も視野に入れている人は、血清マーカー検査は15週に入ったらすぐに受けるとよいでしょう。
★メリット
・血液を採取するだけなので手軽で安全
・羊水検査を受けるかどうかの判断材料になる
★デメリット
・確率がわかるだけなので、その数値をどう受け止めればよいか判断が難しい
・保険がきかないので検査料が2〜3万円かかる
確定診断検査 【羊水検査】
★検査の方法
羊水穿刺といって、超音波で胎盤の位置を確認して腹部に細い針を刺し、子宮内の羊水を採取してその中の胎児細胞で染色体分析を行います。痛みは殆どありません。検査時間は10分程度です。この検査では、破水や感染などで0.3%程度、流産することがあります。そうしたことを考慮して受けるかどうかを検討する必要があります。
★結果の受け止め方
羊水検査で異常なしと出れば、ほぼ心配はありません。問題は異常の診断が出た場合です。障害の程度は様々で、社会的に自立して才能を開花させる人もいます。例えば健常者のように成長しなくても育てる喜びは同じです。慎重に結論を出しましょう。
★注意点
胎盤の位置やおなかの張り、不正出血によっては検査自体ができないということがあります。また、羊水がうまく採取できない時は、1週間ほどずらして再検査します。
★メリット
・確定診断が出る
★デメリット
・流産を引き起こす可能性が0.3%程度ある
・人によっては痛みがある
・障害の有無は分かっても程度までは分からない
・保険がきかないので検査料が6〜10万円ほどかかる
確定診断検査 【絨毛検査】
妊娠10〜12週に行われる。羊水検査と同じく、染色体、代謝、遺伝子の異常を調べることができるが検査による流産率が高く、実施できる施設も限られている。
【受精卵診断検査】
体外受精による受精卵を検査するもので、受精卵が4〜8個の細胞に分裂した段階で1個の細胞を採り、染色体や遺伝子の状態を調べます。その結果、異常がないものだけを子宮内に挿入することから、着床前診断ともいいます。検査対象は従来、重篤な遺伝性疾患のおそれがある場合に限定されていましたが、2006年日本産科婦人科学会は、習慣性流産のうち、染色体の一部が別の場所に入れ替わる転座が原因のものについても検査を認めました。
【羊水検査の流れ】
染色体異常などを調べる羊水検査は、妊娠18週の前半位までに受ける必要があります。これは人工妊娠中絶手術が可能な時期が、原則的に妊娠21週6日までと母体保護法で定められているからです。検査の結果、中絶を選択する場合、結果が出るまでの2〜3週間という日数を計算に入れて早めに検査を受けておくようにしましょう。
検査の進め方は病院によって多少異なりますが、ます、血液検査や子宮口の状態を確認します。次に、超音波で胎盤と胎児の位置を確認して安全な位置を決め、腹部を消毒したら慎重に穿刺針を刺し、羊水を約10〜20cc吸引して終わりです。尚、採取した羊水から胎児細胞を培養し染色体分析が行われます。

出生前診断検査の是非が問われている

現在、出生前診断検査は広く実施されつつあります。

しかし、その是非についてはマスメディアでもしばしば大きく取り上げられて論議を呼んでいます。

結果により中絶を選ぶ人が少なくないことから、命の選別につながる、障害者を否定しているという批判がある一方で、赤ちゃんに染色体異常がないとわかって安心して産めたという意見もあります。また、染色体異常や遺伝病を恐れて今まで妊娠に踏み切れなかった人や中絶していた人が、検査によって無事出産できたと喜ぶ声もあります。このように出生前診断には様々な意見があり、倫理上の難しい問題をはらんでいます。
医師は検査についての説明を行うだけで、受けるかどうかの選択はあくまで妊婦さん側に委ねられています。それだけに、夫婦でじっくりと話し合い悔いのない選択をすることが大切といえるでしょう。

検査の目的を理解しておこう

出生前診断検査の目的は、生まれる前に胎児の状態を把握することです。
たとえ、どのような結果が出ても中絶をせずに妊娠を継続しようと考える人には、羊水検査は勧められません。赤ちゃんにとっては、流産の危険が伴う検査だからです。
現実的に考えて、検査結果が自分たちの望むものではなかったなら中絶を選択しようと考えている場合には、羊水検査は必要になるでしょう。いずれにしても、十分に時間をかけて夫婦で決断することが重要です。
また、検査でわかるのは一部の限られた先天性異常や疾患であり、全ての異常を発見できるわけではありません。
仮に異常や障害が発見されても、程度などの詳しい状態まではわかりませんし、検査によっては確率的な数値が示されるだけだったりします。こうした問題もきちんと認識することが大切です。

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